トップページ 社会保障の種類・内容 >  3.公的医療保険と医療体制

[3]誰もが医療を受けられる公的医療保険と医療体制

公的医療保険の2022年度改正
市町村国民健康保険、保険料上限額の引上げ
a.医療基礎年65万円(2万円引上)、高齢者支援20万円(1万円引上)
b.上限該当者の年収1140万円(単身・全国平均)
後期高齢者医療、保険料上限額の引上:上限年66万円(2万円引上)
後期高齢者医療、10月から2割負担になる人
a.年収: 単身世帯200万円・複数人世帯320万円以上、23%が該当します
b.緩和措置:通院負担増を月3000円に押さえます
被用者保険の傷病手当金:1月より休業日を通算して1年6か月に変更、支給期間が長 くなります
診療報酬改定率(医療費の公定価格)+0.55%。医療費は上がり、薬価は下がります
医科+0.26%、歯科+0.29%、調剤+0.08%、不妊治療の保険適用+0.2%、看護師処遇改善+0.2%、リフィル処方箋による効率化▼0.1%。薬価▼1.35%、医療材料▼0.02%
オンライン診療の導入
選定療養費 (紹介状なく大病院受診)
10月より200床以上病院が対象。7000円(歯科5000円)、再診3000円(歯科1900円)以上
不妊治療の一部が保険適用
女性40才未満6回、43歳未満3回まで。男性に年齢制限なし、事実婚も対象です
リフィル処方箋の新設
a.症状の安定した患者が、同じ薬を3回まで受け取れます(向精神薬除く)
b.長期処方患者の再診と処方箋料の5割削減になります
産科医療補償制度の対象の改正(重度脳性麻痺)
1月以降の出産で、妊娠28週以上(旧32週)が対象、体重制限は廃止されました
ドクターヘリの全国配備が完了:4月で56機、複数機持つ自治体もあります

1.日本の公的医療保険の特徴
国民皆保険:国民健康保険ができ、いずれかの制度に、すべての人が加入できます
フリーアクセス:患者が医療機関を自由に選べます
出来高払い:医師が認めた医療なら医療費の上限なく受けられ、医療費増加の要因になります
全国どこでも一律の医療費
少ない負担で高度な医療を受けられます:保険と税金で補助

2.少ない負担で医療を受けられる公的医療保険
⑴医療費の急増
長寿化・医療技術の進歩・生活習慣病の増加要因で、経済成長率以上に急増しています

⑵加入する保険者の種類 
企業の規模・働き方で加入する制度が異なります 

⑶年齢・所得・医療費に応じた負担軽減
自己負担割合

高額療養費(月額) 
a.医療費が高額な時、所得に応じた負担額まで下がります
b.最低負担額(住民税非課税世帯)月3.54万円
70歳以上非課税世帯月1.5万円、年80万円以下2.46万円
c.最高負担額(課税所得690万円以上)
入院と外来併せて、月25.26万円+(医療費-84.2万円)×1%
d.4か月以上高額な場合、さらに減額されます
e.窓口負担を限度額までの負担にするには認定証が必要です
課税世帯は限度額適用認定証、非課税世帯は限度額適用・標準負担額認定証
c.同一月内の医療費合算と、世帯合算もできます(同一保険者内)
高額医療費・高額介護費合算制度
a.年間の介護費を医療保険者に提出すると、合算して負担がさらに軽減されます
b.最低負担額(年額)
最低負担額(住民税非課税世帯)は34万円
70歳以上非課税世帯は31万円・年金80万円以下は19万円
c.最高負担額(課税所得690万円以上)は212万円

⑷現金給付 (手当金は被用者保険、一部の国民健康保険組合のみ実施)

3.高齢者医療
前期高齢者医療:65-74歳の医療費を現役世代の納付金が支えています
後期高齢者医療
a.75歳以上は個人加入(夫婦でも別加入、家族の扶養に入れません)
b.保険料は都道府県単位で異なります
c.医療費の1割負担、2割負担(10月から課税所得28万円以上の人)、現役並所得者3割(課税所得1 45万円以上の人)
d.9割を現役世代の支援金・税金が支えています

4.医療費の例(診療報酬点数1点10円)
保険診療と自由診療があり、以下は保険診療の場合です
初診料・再診料 (大病院は別額)

時間外等診療加算(初診の場合)

選定療養費 (紹介状なく受診した場合にかかります)
a.10月より200床以上の病院が対象で、全額自己負担です
b.7000円(歯科5000円)以上、再診3000円(歯科1900円)以上
その他診療報酬の例
往診料7,200円+時間外加算(6500円~2.7万円)、地域包括診療料月16,600円、 救急搬送診療料13,000円、乳幼児検査加算100-40%、救命救急入院基本料8-14万円、 集中治療室管理約8-14万円
入院時の食費(1食)※介護施設に併せて徴収、光熱水費

5.いつでも・どこでも医療を受けられる医療体制の整備
がん・難病対策
臓器移植・再生医療の研究・実施
医療機関の整備:病院・診療所
医療職の育成と適正配置:チーム医療のメリット、勤務医の働き方改革
患者主体の医療:在宅医療体制の整備、総合診療医の育成、末期医療の選択
医療の安全:産科医療保障制度、医療安全支援センター、医療版ADR、医療事故調査センター

6.救急医療・救急搬送 
⑴救急医療
一次救急(初期)~三次救急(重篤)
小児・周産期専門病院

⑵救急搬送
救急車は最寄りの病院へ、ドクターヘリは最適な病院へ向かいます
救急車
a.年間出動593万件、搬送529万人、救急車6,759台、救急隊員6.5万人 うち救急 救命士は2.8万人です
b.軽症者割合(入院不要)46%、高齢者62%
c.到着まで平均8.9分、搬送時間40.6分と、遅くなっています
d.病院に配備するドクターカーもあります
ドクターヘリ
a.空飛ぶ集中治療室。医師・看護師が同乗し、治療開始するため救命率が高い
b.47都道府県が56機配備(80機が理想)。長距離・夜間は飛べません
相談共通短縮ダイヤル (救急医療の適切な利用が目的)

7.医薬品の開発と副作用、麻薬問題
新薬:開発に年月と多額の研究費がかかり、厚生労働省が承認すると保険適用になります
後発医薬品(ジェネリック):医療費を削減するため使用を促進しています
特許が切れているため安価で、長年の利用で安全が確認され、飲みやすく改善もされています
副作用被害救済制度の種類:医薬品・ワクチン・スモン・HIV・C型肝炎にあります
若者に広がる薬物被害
a.1回でも「薬物乱用」になり、インターネット販売で若年化しています
b.旅行者に「土産物」と称して小口運び屋を依頼、逮捕されています。知り合いでも注意が必要です
c.副作用:免疫力低下・幻覚・妄想・異常行動・思考力低下など、体も心もボロボロになります